二階の部屋のドアを閉めると、博子は大きく息をついた。
「達也さん」
彼はコートを脱いでいる最中だった。
「新明くんのこと、ごめんなさい」
一瞬彼の手が止まるが、何の言葉も返ってこない。
「ごめんなさい」
声が震えるのが自分でもわかった。
彼はコートを椅子にかけると、博子使っていた勉強机に置いてあるアヒルのおもちゃを手に取った。
背中を向けたまま、やはり彼は何も言わない。
「許してもらえるとは思っていないけど、信じてほしいの。彼とは、みんなが言うような関係じゃないの、絶対に」
相変わらず彼はおもちゃを触っているだけで、無言のままだ。
「初恋の人だったの…」
「……」
「新明くんのことが好きだった。すごく好きだった。でも彼、私が高一の春に何も言わずに突然いなくなって…それ以来、ずっと彼への想いの行き場所がなくて…苦しかった」
達也を見た。
「彼に偶然会ったとき、閉じ込めたはずの気持ちが溢れ出てきて、止められなかったわ。
あなたの言う通り、彼が暴力団幹部だと知ってた。警察官の妻である私がそんな彼と会うことはいけないことだって何回も…
ううん、何百回も自分に言い聞かせた。
だけど、会わずにはいられなかった…」
<どうして私はこの人を傷つけてしまったのか…>
後悔が博子を襲う。
亮二への想いが少しでも残っている限り、達也の、この人のそばにいてはいけなかった。
彼の愛を受け入れてはいけなかった。
そうしていれば、ここまで彼を傷付けることはなかったのに。
亮二を忘れるために、彼の愛に逃げた。
彼を利用したと言われても仕方がない。
でも、あの時。
プロポーズされた時、この人と一緒になりたいって思ったことは真実…
「彼とは決して一線を越えるようなことはしていない」
そこまで言うと、博子の目から涙が溢れた。
「今さら何を言っても言い訳にしか聞こえないだろうけど…これだけは信じて」
身動き一つしない彼に言った。
「私は、私なりにあなたを愛してた」
<あなたの優しさが、あなたのぬくもりがどれだけ支えになったことか…>
「達也さん」
彼はコートを脱いでいる最中だった。
「新明くんのこと、ごめんなさい」
一瞬彼の手が止まるが、何の言葉も返ってこない。
「ごめんなさい」
声が震えるのが自分でもわかった。
彼はコートを椅子にかけると、博子使っていた勉強机に置いてあるアヒルのおもちゃを手に取った。
背中を向けたまま、やはり彼は何も言わない。
「許してもらえるとは思っていないけど、信じてほしいの。彼とは、みんなが言うような関係じゃないの、絶対に」
相変わらず彼はおもちゃを触っているだけで、無言のままだ。
「初恋の人だったの…」
「……」
「新明くんのことが好きだった。すごく好きだった。でも彼、私が高一の春に何も言わずに突然いなくなって…それ以来、ずっと彼への想いの行き場所がなくて…苦しかった」
達也を見た。
「彼に偶然会ったとき、閉じ込めたはずの気持ちが溢れ出てきて、止められなかったわ。
あなたの言う通り、彼が暴力団幹部だと知ってた。警察官の妻である私がそんな彼と会うことはいけないことだって何回も…
ううん、何百回も自分に言い聞かせた。
だけど、会わずにはいられなかった…」
<どうして私はこの人を傷つけてしまったのか…>
後悔が博子を襲う。
亮二への想いが少しでも残っている限り、達也の、この人のそばにいてはいけなかった。
彼の愛を受け入れてはいけなかった。
そうしていれば、ここまで彼を傷付けることはなかったのに。
亮二を忘れるために、彼の愛に逃げた。
彼を利用したと言われても仕方がない。
でも、あの時。
プロポーズされた時、この人と一緒になりたいって思ったことは真実…
「彼とは決して一線を越えるようなことはしていない」
そこまで言うと、博子の目から涙が溢れた。
「今さら何を言っても言い訳にしか聞こえないだろうけど…これだけは信じて」
身動き一つしない彼に言った。
「私は、私なりにあなたを愛してた」
<あなたの優しさが、あなたのぬくもりがどれだけ支えになったことか…>


