はぐれ雲。

無口だがそれとは相反した大胆な彼の走りに、リサは惚れた。

グループの女の誰もが亮二の彼女の座を勝ち取ろうと、機会をうかがっている。

リサは負けたくなかった。
亮二にけむたがられても、彼のあとを積極的についてまわった。

その様子は、浩介たちもあきれるくらいだ。

彼のアパートにも行って、勝手に掃除をしたりご飯を作ってみたり…

自己満足と言われればそうだったかもしれない。
しかし、リサにはそうすることが自分の居場所だった。

リサの家庭の事情を知っていた亮二は、もう彼女に帰れとも、出て行けとも言わなかった。

「亮二さんに媚び売ってんじゃねぇよ、リサ」
グループの他の女たちから罵声を浴びることもしばしばだった。

でも気にしない。
人が何と言おうと、亮二のそばにいられるだけで幸せだったから。

しかし、別れは突然やってくるものだ。

亮二が暴走族を抜け、圭条会に入ることになった。

「あたしも連れてって」
当然リサはそうお願いした。

「だめだ」

「だって直人も、浩介も一緒なんでしょ!なんであたしだけ…」

「おまえが来るようなとこじゃねぇんだ。悪いことは言わない、家に帰れ。」

亮二の『帰れ』という言葉が胸に突き刺さった。

浩介が慰めるように言う。
「な、リサ。おまえはおまえで自分の道をみつけろよ、な?」

「…たわよ…わかったわよ!」
悔しかった。

親に拒絶されても涙なんて出なかったのに。

亮二は自分を置いていってしまうんだ。
そう思うと泣けてきた。

「リサ!」

浩介の声が背後から聞こえた。

リサは走った。

もしかしたら亮二が追いかけてきてくれるかもしれない。
そんな淡い期待を抱いて、走った。


誰もいない公園のブランコをリサは一人こぐと、規則的にキィキィときしむ。

結局彼は追いかけて来てくれなかった。

一緒にいた時間が誰よりも多かったリサを、彼は少しも好きでいてくれたのではと思っていた。

でもそれは思い過ごし。

好きで好きで仕方なかったのは、自分だけ。
完全な一方通行。

<これからどうしよう。家には戻りたくない>