はぐれ雲。

リサは舌打ちをした。

「お留守番電話サービスです…」

その無機質な音声が、余計に彼女は苛立たせる。

ここ数週間亮二と連絡がとれない上に、AGEHAにも顔を見せない。

電源を切っていたり、留守番電話になってることが多い。

新しい「仕事」でもあるのだろうか。

それとも…

ふと、ある女のことが頭に浮かんだ。

パッとしない女。
この街には不似合いな女。

その女が亮二を「新明くん」と呼んだ。

彼は人違いだと言ったけど、やっぱり気になる。

まさか、とは思ったが、確かめずにはいられなくなった。


「直人、浩介」
圭条会の事務所から出てきた二人に、リサは声をかけた。

「げっ、リサ」
浩介は気まずそうに直人の陰に隠れる。

「聞きたいことがあるんだけど」

「なんだよ、俺たち急いでるんだ」
直人が答える。

「亮二のこと」

浩介は顔を歪めて、ますます直人の陰に隠れる。

リサはそれを見て確信した。

「女?」

浩介とは正反対に直人は表情を変えずに、逆に質問した。

「なんだそれ?」

「うそ。知ってるくせに。ねぇ、浩介?」
浩介の顔を覗き込む。

「いや、俺は知らねぇなあ」

彼は目を合わさない。

「リサ、悪いけど急ぐんだ。また今度にしてくれないか」

直人は浩介を小突くと、リサを置いて歩き出した。

「待ちなさいよ!ねぇ!あんたたち、ただじゃおかないから!」


リサの叫び声に、直人はため息をついた。

「ひぇ~、マジで怖ぇ」と浩介は身震いする。

「亮二さんの女だと思って、俺らのこと完全に下にみてるぜ、あいつ」

「まぁ、あれでも昔はかわいかったんだけどな」

そう言って笑うと、直人は車のキーを取り出した。