はぐれ雲。

徹夜で作った巾着にお守りを入れて、彼の前に差し出す。

亮二は博子とその巾着を交互に見て、指先で赤い紐をつまむと、目の前にぶらさげた。

「これ、おまえが作ったろ?」

「え…?」

「縫い目がとんでるぜ」

恥ずかしさのあまり、顔が熱くなる。

「もう、いいよ!」

<一生懸命作ったのに、そんなこと言わなくたって>

博子は背中を向けて駆け出した。
ここまで女心がわからない男がいるのかと、悔しくなった。

「おい、これ」

亮二の声に思わず振り返る。

彼はそんな博子に向かって何かを投げた。

弧を描き、それは彼女めがけて飛んでくる。

慌てて両手でキャッチしてみると、神社でもらってきたお守りだった。

投げるなんて、なんて罰当たりな…そう思ったのも束の間、<…なんで?迷惑だったの?>という気持ちがよぎる。

哀しげな顔で彼を見ると、

「神頼みはしない主義でな」

そう言って巾着だけをくるくる指で回した。

「ま、これはもらっといてやるよ」

「……」

「じゃあな」

じわじわと胸が熱くなった。

「うん!がんばってね!」

亮二は片手を上げた。
アザのあるあの右手を。

「応援してるから!」

「こんなの小銭入れにもなんねぇよ」

そうつぶやくと、試合会場へ入って行く。

博子はそのお守りを握りしめた。