俺が龍崎組に入って二ヶ月も経ったころ。


いつもは騒がしいほど賑やかな龍崎家が、緊張を帯びて誰もが表情を引きつらせている夜があった。


何だ?出入りか―――?


そんな風に思ってお嬢を見ると、彼女は違った意味で緊張してそわそわと落ち着かなかった。


柱にくくりつけた古い時計を何度も見てやがて、たっと玄関まで駆けて行った。


不思議に思って後を着いていくと、組員も緊張した面持ちでぞろぞろと玄関に向かう。


ガラっ


古い引き戸が開いた。


それを合図に両脇にずらりと並んだ組員たちが、揃って頭を下げる。


カツン…


低い靴音は心地よく耳に響き、高級そうなスーツを粋に着こなした若い男が一人。マサさんに促され、姿を現す。


「「「ご苦労様でやす!!!」


緊張を帯びた組員の声が響き渡る。





俺にはすぐ分かった。





彼が青龍会、会長、龍崎 琢磨―――だと言う事を。






180㎝以上ある長身はすらりとスタイルが良く、瞳の奥底で光を湛えた視線は険しいのに、どこか余裕を感じられた。


切れ長の目の上にはきりりと吊り上がった眉。意思の強さを物語っているようだ。


戒さんのおやっさん、白虎会会長とはまた違った雰囲気の迫力だった。




俺は同時に気付いた。




彼が纏う計り知れないオーラ。


威圧的だけど、どこかカリスマ性を滲ませる不思議な金色(コンジキ)のオーラ。







黄龍―――





本当に存在したのだ。