高校を卒業して大学入学までの二週間で、俺は慌しく東京でアパートを探した。


家賃6万の安アパートだったが、寝に帰るだけなら充分だ。


バイトも見つけて、念願だった大型二輪の免許を取得するため、教習所にも通った。


大学に入ると、山のような課題とレポート。


平均睡眠時間は2時間というハードなスケジュールをこなした。


それでも良かった。


忙しくしていれば、色々と気が紛れるから。


戒さん、今頃どうしてるかな?なんて考えなくても―――


いや…それだけは到底できそうにない。


何かの拍子に、彼は俺の心の中に入り込んでくる。


払っても、払っても…その影からは逃げられなかった。




バイクの免許は三ヶ月程度で取ることができた。


そうなると今度は欲しかったバイクの為に、またバイトを増やし


夏が来る前、俺の貯金はかなりのものなっていた。




俺は念願だったホンダのシャドウファントム<750>を購入することに成功。





ミニチュアじゃなく1/1サイズ。


惚れ惚れするような黒い艶やかな光り。


独特の滑らかな線。


耳に心地よいエンジン音に、走り抜けるときのスピード。


どれをとっても俺にとっては最高のもので、マシン以上の女なんて現われないだろうな…


と若干危ない考えを抱きつつも、俺はそのバイクに夢中だった。