耳にすんなり入って来る柔らかな声。



「……あの日、強制的に合コンに参加させられて、最悪だと思ってました。でも…紀斗さんに会えた事は最高だと思ってます」



初めて、名前を呼んだ。

初めて、気持ちを言った。

恥ずかしかったけど、呼べて良かった。

言えて、安堵した。



「憂愛さ、何でストレートに言わないん?」



「何を?」



「―――好き、って」



これは歳の差か。

彼が素直なのか。

私には言えない。



「そっちの方向でお願いします」



清水の舞台から飛び降りる覚悟はないんだ。