「ありがとうございました」



診察室を出ると、兄貴は居らず、彼しかいない。

妙な緊張感を抱えながら、隣に座る。



「…左耳、もう聴こえないみたいです。何も」



ショックというより、理解がまだ100%出来てない。

いきなり聴こえないなんて、わかれと言う方が無理でしょ?



「俺がおる」



「え?」



「人より耳からの情報が減るんなら、俺が何やって教えるで」



貴方にはもう教えて貰ったのに。

“人を好きになる”という、大きな事。

多分、この先も永遠を信じたりするのは難しいだろうけど、今、彼と居たいと思ったんだ。