* * *



「来るつもりはなかったのに、
なぜだか足が向いてた。

帰ろうと思った時、音が
聴こえてきたんだ」



久住先生はそう言って
空を見上げる。



先生が立つのは窓際。



窓ガラスに片手を当て、
青く澄んだ空に、遠く
視線をさ迷わせてた。



「君の音だって、すぐに
わかったよ。

だけど、本当に驚いたな。

練習の時の音と、まるで
違うんだから」



「…………」



嬉しいようなくすぐったい
ような、不思議な感じだった。


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