* * *



家に帰ってからも、まだ、
あたしの心臓はトクトクと
落ち着きがなかった。



走って校舎を出た動悸は、
電車に乗って家まで歩いて
くる間にすっかり収まってる。



だけど静かな興奮だけは、
いつまでも冷めることが
なくて――。




「………ただいま」



玄関からまっすぐダイニングに
入ると、キッチンで夕食を
作ってるお母さんに声をかける。



お母さんはお鍋を掻き回す
手を止めて顔をあげると、



「お帰りなさい。

……遅かったのね」


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