この山の奥深くにはもう住人はいないであろう寂れた屋敷がある。


中は外見とは裏腹に、掃除がされている様な小綺麗な処であった。



そこには狐が住まい、その狐に仕える小妖怪や野狐がいる。


そんな中、この屋敷の中でも最も広い一室。



「――まだ奴は、見つかっておらぬのか…。」

女狐に酌をさせながら、相手を見据える着物を着崩して上座に座る妖艶な男。


「…申し訳ありません。」


その男に下座の位置から頭を下げる男。


「奴が姿を現したのはつい最近の事だ。」


「はっ必ずや貴方様の下へ奴を献上致します。」


「…そうか。期待しておるぞ。」

妖艶な笑みを浮かべると、隣の女狐がほう、と頬を染めた。


「御意。」


それを気にする事なく返事をし、その場から立ち上がり部屋を後にした。





襖を閉めて廊下を歩き、中庭の所で足を止めた。外は不気味な赤い月が見えた。


その月を見上げて男はニヤリと笑った。



「これから、楽しくなりそうだ。なあ、―――?」