Fahrenheit -華氏- Ⅱ


俺はテーブルに置かれた伝票を握った。


瑠華の手がまたぴくりと動き、顏を上げる。ほんの少し不安そうに表情が揺れていた。


その“不安”の中に、どんな複雑な心境が渦巻いているのか、覗きこみたくても


直視できない。






ごめん、瑠華。


こんなところで、こんなタイミングで切り出すつもりはなかったけれど。




「あと、俺と真咲が本当に切れた理由、


あいつの浮気は事実だが、







その前に、真咲は妊娠した。





当然ながら俺の子供だ」





瑠華がここに来て初めて動揺らしい動揺を浮かべ「え?」と言う感じで目をまばたく。




「でも俺は学生でどうしようもなくて、


『産みたい』言ったあいつの意思に反対して…説得させて堕胎をさせた」




瑠華は目を開いたまま固まった。




「呆れたろう?俺に。まだヒトとして形もなってない我が子をこの手で―――


俺はマックス…いや、





マックス以下だ。






俺はヒトゴロシ。瑠華は詐欺師。そんな二人がうまくやっていける筈がない。






別れてくれ」