二村が隣のブースに行ったのをきっちりと目で確認して
「ごめん、変な空気にしちまって」と俺はわざとチャラけて笑った。
空気を和ませるために言ったわけだが
「いえ……」と佐々木は顏を青くさせて俯いている。何せ付き合いが長いからな。俺が本気かそうじゃないか理解しているのだろう。
つまり俺が二村に本気で怒ったと言うことに気付いている。
瑠華は相変わらずの無表情で―――感情が読み取れない。
「仕切り直ししよう!」
俺は両手でパンっと手を叩いて
「前回ダブルブッキングと言うトラブルでアメリカンウェストスターさんを優先させてしまった。今回は絶対セントラル紡績さんの取り引きを成功させたい」
と二人を眺め
「俺の確認不足で申し訳ないが、今回は二人にこの引き合いを頼みたい」と頭を下げる。
「そんなっ!確認不足なんて…!ダブルブッキングなんて今まで無かったわけじゃないですし」
と佐々木は慌て、代わりに瑠華は
「この業界、そう言うトラブルはつきものです。お気になさらず」と言いながらさっきの俺の暴挙にも動揺することなく、早速PCのキーボードに指を走らせている。
仕事が早い、のは相変わらずいいことだし、二人の理解を得て良かったものの、俺はこの日“わざわざ”休日出勤してきた二村が
気になる。
もしかして俺が“決着”を付けようとしているのを―――気付いたかもしれない。



