素直に言ってしまったが、おばさんは俺の罪と言うものが分かっているのか、彼女も俺と同じように床に両膝を着くと
「神はお赦しになると思いますよ」
やんわりと言い、そっと俺の頭を撫でる。
「赦される―――ことなんでしょうか。
俺は彼女を―――……裏切ると言うのに?」
「ときが満ちたら
赦されるでしょう」
おばさんは、俺の髪をそっと撫でながら
何故―――そう思のか、聞きたかったが
聞けなかった。
鼻の奥がつんとして、嫌な痛みを感じる。
「だって、その裏切りはあなたの本意ではないのでしょう?」
俺は初めて顔を上げ、おばさんと顔を合わせた。
おばさんは少し切なそうに―――しかし優しく微笑んでいた。
「だいぶ前にね……もう何年前になるかしら、同じようなことを言っていた女性がいるの。
ああ、ちょうど…あなたの左眼と同じ色をしていてわ」
左眼―――
ブルー掛かったグレーの…?
「それ!そのひとは、今どこに!?」
俺は思わず勢い込んでいた。
ここでおばさんははじめて狼狽を見せた。
「分からないわ。ただ、その瞳と言葉が印象的だったから」
それは―――
きっと俺の母親だ。
俺の母親は外に男を作って、親父と離婚した―――筈。
でも
俺のことを本当に愛してくれていたのは事実だ。
「あなたは―――その女の人にも同じことを?」
俺は項垂れながら聞いた。
「さあ、覚えていないわ」おばさんは寂しそうに言う。
「じゃぁ……」
無責任なこと言うなよ―――、そう思ったが、おばさんに当たったってしょうがないし、そんなことしたら俺はサイアクだ。
「すみません、変なことを聞いて」
俺は立ち上がった。おばさんも立ち上がる。
きっちり礼を述べて、教会を去る間際……本当に扉が閉まる瞬間だった。
「“あの坊や”がこんなに立派に育って、神も誇らしいでしょうね」
おばさんは十字架の方を見て扉を閉めた。
おばさんは―――
俺を覚えていた―――?
俺は、赦されるのだろうか。
赦されるまで、一体どれぐらいの時間が必要なんだろう。
―――
―――――
日曜日の昼過ぎ、流石に休日出勤しているのは俺だけで、フロア内はしん、と鎮まりかえっていた。
つい最近までバタついていた隣のブース物流管理本部も、稼働していない。
そいやぁ俺、村木が休日出勤してる所見たことないな。自分がそのスタイルだから部下たちにもそう言ってるのであろう。
誰も居ないことが幸いだ。
俺が到着した15分後ぐらいに、佐々木がブースに顔を出し
「あ!おはようございます!すみません、遅れて」と慌てる。休日出勤だと言うのに、わざわざスーツを着ていた。
まぁ俺も普段通りスーツだが。
「いや、遅くねーし。てか休日出勤だからその辺フレックスタイムだろ?」俺はわざとチャレけて笑うと
「そうなんですか~」と佐々木もいつもの調子に戻る。
それから五分後
「おはようございます」
と
瑠華が顔を出した。



