Fahrenheit -華氏- Ⅱ


思わず口に出そうになった。


「ところで、バザーのお客さん?」とおばさんに聞かれ


「バザー?」


「あら違うの?来週日曜日にチャリティーバザーがあるのよ。この教会随分古いから修繕することになって」


なるほど。


てことはこのおばさんはここの管理人(?)と言うわけか。


俺は慌てて体のあちこちに触れた。


出社するためにスーツに着替えてきたから、金目のものはないが…


「あ」


ネクタイに触れた際、ネクタイのしめ具合が気に入らなくて、珍しくタイタックピンを刺して止めた。シルバーの台座に誕生石の小さなターコイズが乗っている。


「あの、これで良ければ」俺はタイタックピンを抜き取り、おばさんに手渡すと、おばさんは目を丸めて


「こんなに高そうなものを?」


「いえ、そんなに高くは…」謙遜ではない。一年前にデザインが気に入って買ったが、それほど使い道もなく、箪笥の肥やしになっていたものだ。


「あの、それより中に入っても?」


おばさんはタイタックピンを手のひらで大事そうに包みながら


「ええ」と頷き


「お祈り―――してもいいですか?」と聞くと、おばさんはまたも目を丸めた。


俺はワイシャツの襟元から首にぶら下げてあるチェーンの……同じくターコイズの石が置かれているロザリオを見せた。


「母がカトリックで、俺も小さいころ、ミサに」


「あら、そうなの。お若いのに信仰深いのね」とおばさんはまたも朗らかに笑った。


「もちろん、どうぞ」と快く開けてくれる。