Fahrenheit -華氏- Ⅱ


菅井さんとは店から少し離れた大通りで別れた。俺はタクシーで、菅井さんは地下鉄で帰ると言う。


「それじゃ、また」と菅井さんの気軽な感じが心地良い。


「また」俺も気軽に返した。


重かった気持ちが少しは軽くなった気がする。


それでも一人、マンションに帰ると再び孤独は押し寄せてくる。


あれから瑠華から返信があって


『お仕事中にすみません。改めます』と相変わらずそっけないメール文を見て、小さくため息。


何気なく…


壁に張りつけたカレンダーを見ると、明日は10月30日(日)になっていた。


その『30』と言う数字だけがやたらと視界に焼け付く。


『期限は11月1日。ぞろ目でいいでしょ♪


あ、そー言えば11月1日って言えば




辞令も下る日でしたねぇ』


二村のあのムカツク程厭味ったらしい言葉とその数字が交差した。


俺は携帯をキュッと握った。


――――


――


次の日、日曜日だったが、俺は会社に向かった。


その途中、教会がある。決して規模は大きくない。木造建ての背の高い壁の上部、十字架にくりぬいた窓と、その下にはめ込まれたステンドグラスが見えて、俺は何となくそこで車を停めた。


この場所に教会があるのは知っていた。


俺がまだ小さな……小学校ぐらいだろうな、母親がカトリック教だから日曜日になるとミサの為、必ず手を引かれてこの教会に向かった。