Fahrenheit -華氏- Ⅱ



「でも、どんなドレスなんですか?ハロウィンだから黒い感じ?」


菅井さんは想像しているのか首を捻る。


「いや、ゴールドで…殺人鬼と言う設定にしてはどうかと思ったんですけど、あんな可愛くてきれいな彼女が訪ねてきたらすぐに迎え入れそうな。例え背後に斧を持っていようと、こう、ね!


『どうぞ、どうぞ~!』って」


は!まさかそれ狙い!?


「危ないですね、一瞬で殺されそう」菅井さんは苦笑。


「実際、NYに居たときのハロウィンパーティーもドレス姿で手作りの血のり付き斧を持ってたみたいです」


「血のり付きの斧!」菅井さんは明るく笑い、どうやら笑いポイントに入ったみたいだ。


それを流れに俺は菅井さんに瑠華のことを自慢したいのか、携帯で撮った写メを見せた。


菅井さんは一枚一枚丁寧に見ながらしばし沈黙。


瑠華のきれいさにビビッた…?と思ってたら


「あの……これって盗み撮りってやつじゃ…?」と疑わしげに俺の方を見てきて


携帯を確認すると、確かに会場に入ってからの瑠華の写真……それも遠巻き(マックスの姿は写真に入れたくなかったから絶妙なアングルで…じゃない!)俺たちほとんど会場内で会話を交わさなかったし…


それでも瑠華の姿を写真に収めたくて。


「いや!盗み撮りとかじゃなくて!。ちゃんと本人の意思確認(?)を取って撮ったのもあるんですよ」俺は慌てて画面を切り替えた。


そこには行きのリムジンの中で撮った数枚の写真が収められている。


瑠華一人のものは勿論(勿論、カメラ目線)俺と二人の自撮りのも。


「………」


菅井さんはまたも沈黙して


「神流さん、写真集でも出されるおつもりですか?」と真剣に聞かれ、俺は


「あ、あはは~…」と頭を掻いた。


菅井さんは俺の携帯を持ちながら


「でも……こんな風に笑うんですね、柏木さん」と微笑ましいものを見るような目つきで目尻を下げる。「しかし目のやり場が……」と菅井さんは僅かに顔を逸らす。確かに瑠華のドレスの胸元は深く開いていてそこからくっきりと谷間が覗き見えるが。


普通の男なら「見るんじゃねぇ!」って思うが、菅井さんだから…真咲の婚約者だから?いや、そう言う関係が無くても俺はこのひとにそんな気は起こさないだろう。


菅井さんが持った携帯の画面は、笑っている瑠華の頬に俺がキスをしている、と言うものだった。


ぅを!!


寄りに寄って何故その写真!!