決して強引な物言いではなかったが、菅井さんは何かしら悟ったのかもしれない。
強引に押したわけでもない、過剰に退いたわけでもない。
ただ、このひとの独特なテンポが心地いい。
不思議だな。
独りになりたいのに、独りでいたくない。
瑠華と俺がまだ親しくなる前、瑠華は
『……ごめなさ……。
……どうしよぉ………あたし……寂しい……』
と電話口で泣いていた。
俺は初めて―――瑠華の気持ちが分かった気がする。
誰かに縋りたい。
けれど誰でもいいわけじゃない。
「すみません、西麻布までお願いします」と次の瞬間、俺はドライバーに告げていた。
そこから約30分掛かって、前回菅井さんと会ったバーに到着した。
『大人な隠れ家』チックな扉を開けると、木製のカウンターにすでに菅井さんは腰を下ろしていて、俺を見つけると軽く手を振った。
菅井さんは、いつも見るスーツ姿じゃなく、タートルネックのニットとジャケット、ジーンズと言ったシンプルな私服姿だった。そのセンスはしっくりと菅井さんに合っている。
「お待たせしました」
俺が隣のスツールに腰掛けようとすると、菅井さんは目をパチパチ。
「すみません、結婚式の帰りでしたか…」と指摘されて、俺は改めて自分がフォーマルスーツ(それもかなりビシっとしたの)を着ていることに気付いた。
「あ、いや!これは結婚式のゲストじゃなくて」
俺はかくかくしかじか、内輪でハロウィンパーティーを催すことになった、と説明した。
「へぇ、パーティーですか」と菅井さんは面白そうに目をぱちぱちしながら俺の方へ身を乗り出した。「でも普通ハロウィンパーティーてもっとゾンビとか、囚人とか、吸血鬼とか、そんなコスプなイメージですが」
「いや、る……柏木さんが……てかあのひと、殺人鬼設定だからドレスにするって言ってて、じゃぁ俺も、って感じなんですがね。て言うかあのヒト殺人鬼だとどんな服でもいいからって、面倒くさいオーラが駄々漏れで」
ガクリと項垂れると
「はは」と菅井さんは笑った。「柏木さんらしいですね」



