古い造りなのかエレベーターは二階までしか下らず、きっと二階にチェックイン、アウトのカウンターがあるせいね、一階はロビーと正面玄関と言う作りなのだろう。行きはすぐに最上階まで昇ることはできても帰りは必ず二階のカウンターのフロアで降りなければならない。
あたしは迷わず『2F』のパネルを押した。
エレベーターがゆっくり下降していく。
震動をあまり感じられない無音の空間で、あたしは額に手を当て深いため息をついた。
もう二度と会うと思ってなかった。
消し去りたい過去。
でも消せないのは―――ユーリの存在があるからだ。
愛する我が子。
あたしのたった一人の―――娘。
今年はどんな衣装を着るのかしら。魔女?デビル?きっとどんな衣装を着てもあの子に似合う。
ユーリのことを思い出すと、涙腺が緩む。
いつの間にかエレベーターは2Fフロントに到達していた。
エレベーターを降りると、思った通り真正面…と言うより目線の下に受付カウンターが広がっていて、ゆったりとした間にこれまたゆったりとした間隔で上品に配置されたソファたちが点在している。
その両脇から流れるような美しい曲線を描いた階段が広がっていた。
深紅のベルベッド素材の絨毯ととゴールドの取っ手が上品な高級感を漂わせている。
あたしがその階段をゆっくりと降りているときだった。
下から若い、男性――――が昇ってきた。
いいえ、男性と言うにはいささか若すぎる。大学生ぐらいの、ちょっと目立つ……ミルクティーにイチゴのシロップを混ぜたような、綿菓子を思わせるふわふわ髪に、黒い革ジャン、ダメージ加工のジーンズに、それに少しそぐわない童顔が目を引いた。



