Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「Hey, Louie……(ルーイ)]


とティムは決して強引でない動作であたしの腕を軽く掴んであたしを振り向かせる。


「Shhh(しー)」


あたしは悪戯っ子がイタズラを見つけられそうになった子供のように唇に人差し指を当て


「Keep it a secret.(それは内緒)


Me and you, our own secret.(あたしとあなたの秘密よ)」


人差し指を左右に振って小さくウィンク。


「OK.I didn't ask any questions.(俺は何も聞かなかったことに)」


「I love you,Tim.(愛してるわ、ティム)」


あたしは大きな体のティムに軽くハグ。


「I love you, too.(俺もだよ)」


ティムと両頬にキスを交わしあい、あたしは降パネルを押すとエレベーターは運良くすぐ上がってきた。


エレベーターに乗り込んでも、マックスは追ってくる気配はなかった。


いえ、追ってこられても困るんだけどね。


でも、追ってこないってところに彼の妙な余裕と言うものを感じる。


―――と言うことは、ユーリをここに連れくる?


ティムは本当に知らない素振りだった。彼はマックスのボディーガードとは言っても、いつだってあたしの味方だった。


ユーリをここに連れてくる?


二度目の質問に


いいえ、そんなことある筈ないわ。


あたしはぶんぶん首を横に振った。


あたしから全て奪っておいて、飄々とあたしの前に現れ、心をかき乱す。


最近はかき乱されることなく、平穏に過ごしてた。




それは啓があたしの冷え切った心を温めてくれたから、いっとき凍てつくように冷たくて、辛い過去を忘れられた―――