Fahrenheit -華氏- Ⅱ



何なの!


殆ど飛び出るような勢いでバーの外に出ると


「Hey,Louie!(ルーイ)」


と言葉通りバーの外で控えていたティムに呼び止められた。


入って行く客たちがティムとあたしを見て、驚いたように後ずさっていく。それすらも、もう気にならなかった。


「You're leaving?(帰るのか?)」


「Yeah, The next time Max comes to Japan, he said he would bring July with him, is that true?(ええ、ねぇ次回あの人が日本に来るとき、ユーリを連れてくるって言ってたけど、本当のことなの?)」


あたしがぞんざいに腕を組み、背の高いティムを睨み上げると


「I don't know the details.(さぁ、詳しいことは知らない)」とティムは肩をすくめる。


「Whatever, Well, then, next time he comes, make sure he has plenty of security.(そ、じゃぁ次回来るときは警護を多くしておいて)」


ティムは悪くない。これは完全なるあたしの八つ当たりだ。


けれどティムは気を悪くした様子もなく


「Louie, is someone coming to get you?(ルーイ、誰か迎えに来ないのかい?)」と心配そうにあたしを見下ろす。


あたしは軽く手を振ってティムの横を通り抜けようとした。


「It's safer here than in New York. I'll call a cab.(ここは向こうと違って安全よ。タクシーでも拾うわ)」


「Isn't the man you just met coming to get you?(さっきの男は迎えにこないのかい?)」


あたしは歩を止め、目を開いた。


”Isn't the man”





啓は――――……




来ない。