Fahrenheit -華氏- Ⅱ



マックスの手を乱暴に払うと


「I have no intention of getting back together with you.(やり直すつもりはない)」


そっけなく言い「Is that what you came all the way to Japan to say?(それを言いにわざわざ日本へ?)


You probably talked Coco into it anyway, but I hate to say it, but I have no intention of getting back together with you.(どうせ心音をうまく言いくるめたのでしょうけど、生憎だけどあたしはそのつもりはないから)」と言い、


だけどすぐに心音がマックスに言いくるめられるなんて考えられなかった。


そうなると心音の意図がまた分からない。


でも今考えたって仕方ないことだ。


「If July's not here, there's no reason for me to see you.(ユーリが居ないのなら、会う理由はないわ)」と言い席を立ちあがった。


「It's a nuisance fee, and you're the one who has to pay here.(迷惑料ってことでここの支払いはあなたで)」と伝票をわざとマックスにずいと差し出した。



立ち去る間際、


「I am…(俺は)」


とあたしの背に向かって声を掛けられ、振り向かなければいいのに、何故か振り向いてしまった。


「Today.I'll be leaving soon.(“今回は”すぐ帰るよ)」


「Please do,I don't want you here.(そうして頂戴。居られても迷惑よ)


You don't need a "send", do you?(送りは要らないわよね)」と皮肉ったが。





「You might need it next time.(次回は迎えは必要かもね)」とマックスは意味深に笑い、グラスを軽く持ち上げる。







「The next time I'll be here is in a two month.(次、来るのは二か月後、)



I'll get July.(ユーリを連れて)」





あたしは目を開いた。思わず口元を両手で覆う。


二か月後……


「Why don't the three of us spend Christmas together as a family?(クリスマスを“家族三人”で過ごさないか?)」


マックスは低く言い、その少しくすぐったいテノールの声は大好きだった、


―――のは大昔の話。


「I’m disgusted with you.Now you're going to use Jenny as bait to catch me?(呆れた。今度はユーリを餌にあたしを釣ろうって言うの?)


Do you really think I'd believe such a lie?(生憎だけどそんな嘘信じると思う?)」


吐き捨てるように言うと





「I'm not lying.(嘘じゃない)」




マックスはきっぱりと言い切った。


そんなの嘘よ―――


嘘――……


あたしは今度こそ何も言い返すことなく、マックスにくるりと背を向けた。