行き来たときよりリムジンの中は妙にこざっぱりとしていた。シャンパンや啓の手作りおつまみも無い。
あたしは目を閉じて、数時間前の光景を思い出した。
啓と二人―――
広くも狭くもない空間に二人きり。
とても楽しかった。
啓と居るときと同じ室内なのに、啓のときはまるで羽根が生えたかのように軽やかだったのに、マックスと居るこの空気はまるで鉛が詰まったかのように今はただ、ただ重苦しい。
車内にマックスと二人きり。いえ、ティムが居るだけで少しはあたしの心も落ち着く。
けれど
あたしの羽根を“また”折ろうとしているのか、マックスは。
あたしはもう一度
「And then?What are you doing?(で?何のつもり)」と改めて聞いた。
「What did I tell you? Coco told me about this party.Halloween is a special night.(言ったろ?ココから聞いた、って。ハロウィンは特別な夜だから)」
「That was a long time ago.(もう大昔の話よ)」
あたしはさっき啓と隣合って座ったけれどマックスの斜向かいに座って腕を組んだ。ティムはただただあたしを見つめて黙っている。
「Don't be so cold.(そんな冷たいことを言うなよ)」とマックスは眉を寄せる。
「I wanted to talk to you again.(もう一度君とちゃんと話したくて)」
「I told you.I told you I had nothing to say to you.(言ったでしょう?あたしは話すことはないって)」
とやりとりをしていると、運転手さんが
「あの、行先は帝国ホテルと窺ってましたが、そちらで宜しいですか?」と遠慮がちにカーテンを捲って聞いてきた。
あたしたちの険悪な雰囲気を察したのだろうか。



