Fahrenheit -華氏- Ⅱ



やがて、綾子たちがダンスから抜け出してきて


「ダメ、やっぱ上手にできないわ」と綾子が悔しそうに顔をしかめながら言って


「本場には適わないってことだな」と裕二も苦笑い。


その中で普通に踊ってる桐島たちカップルて凄いな。


踊っていると言うより、桐島はマリちゃんの腰を引き寄せゆらゆらしてるだけで、マリちゃんはうっとりと桐島に寄りかかっているだけ。


まぁ、あれはあれで雰囲気があっていいけどな。


まだ優雅にダンスを踊っている瑠華たちを視界におさめ


「わり、俺仕事入っちまった。帰るワ」


とわざとらしく苦笑いを浮かべ携帯をふりふり。


「仕事?今から?」綾子が目をぱちぱち。


「柏木さんを残しちまっていいんかよ」と何故か裕二が焦っている。


「何とかなるだろ」俺は簡単に言い


「あ、じゃぁ僕もお手伝いします」と佐々木がついてこようとしたが


「お前はいい、ここに残ってろ。まだ二村たちが来てないだろ?緑川たちを案内してやってくれ」


と早口に言った。


心なしか俯き加減になる。


「綾子、桐島にも頼んだけれど、二村たちが到着するまであの二人を何とか帰してくれ。それとあの男のこと、絶対に言わないでくれ」


「分かった……けど、何でそんなことを?」と綾子は思いっきり不審顔。


まぁ綾子をはじめとするここの人間たちはマックスが何者か知らないから、そう思うのが当然だよな。


でも二村にヴァレンタインとの繋がりを知られたくない。


「いいから、言う通りにしろよ、裕二、今度奢るから頼むよ」と指さし、後ろに歩く。


「お前には借りがあるからな、任せておけよ」と裕二は苦笑い。「ただし董蘭(とうらん)以外な」とこそっと俺に耳打ち。今度は俺が苦笑い。


まだ踊っている瑠華たち二人に気付かれないよう細心の注意を払って、俺はそろりとその場を後にした。