変だな、人魚姫の曲じゃないのに「美女と野獣」のテーマソングだと言うのに…
でも「美女とイケメンだよな」
「すっごいですね……」
隣で佐々木が呆然と突っ立っている。
「ホント……とってもきれいだわ」と綾子も「ほう」とため息をついて口元に手をやる。
料理の給仕に忙しかった桐島でさえ、その手を止めて二人のダンスに魅入っている。
二人のダンスはそれ程自然で慣れたものだった。瑠華から以前聞いていた。ヴァレンタインの家で少しかじった程度だ、と。でも「少し」と言うレベルではない。
昔から……きっと二人はこうやって自然に手を取り合って踊っていたに違いない。
今の瑠華は全然楽しそうじゃないが、以前…マックスに恋をしていたとき、あの絡まる視線の中に熱があったに違いない。
「桐島、代わる。マリちゃんと踊ったら?」と料理の補充に余念がなかった桐島のトングを奪い
「裕二、お前たちも良い機会だから」と言って中央スペースに目配せすると、二人は顔を見合わせ
「いや!“あれ”の中に入っていく勇気はない」と裕二が手を振る。
「そう?俺は楽しそうだから行ってみたいな。マリはどう?」と桐島がマリちゃんを見てマリちゃんがこくこく頷いた。
流石、桐島だな、お前に恐れと言う言葉はないんだな。
桐島たちが手を繋いでホールに出る。それを眺めて
「行く?」と綾子が目を上げ「お、おう」と裕二がぎこちなく頷き、二人が手を取り合って瑠華たちのすぐ近くで身体を寄せ合いぎこちなく…チークダンス?と言うのかあれは。を踊る。
裕二&綾子、桐島&マリちゃんは不慣れなせいかぎこちなく体を揺らすだけだったが、マックスと瑠華は流石に慣れているようで、二人合わせた手をまっすぐに伸ばし、マックスの力強いリードに瑠華は華麗にステップを踏む。
それで居て二組のカップルとぶつからないのが流石と言うべきか、マックスのリードが上手いに違いないが。
瑠華は二組のカップルが混じってくれて少し気を緩めたのか、マックスと踊りながら二組のカップルを見ながら、二組に微笑みかける。
目線が自分の方に向いていないのか、それとも自分に微笑んでくれないのがつまらないのか、マックスは少し強引な……それでいてちっとも嫌味じゃないスマートな動作で瑠華の両頬を包む。
瑠華の手はちょうどマックスの腕を優雅になぞっていた最中で、再び二人の視線がぶつかった。
チクリ、と心臓に痛みが走った。



