マックスはすでに赤ワインの入ったグラスを二つ手にしていて、その一つをこれまた隙のないスマートな動作で瑠華に手渡した。
流石レディーファーストな国なだけある、何をやってもスマートで男の俺が見てもかっこいい。
瑠華の好みを知り尽くしているのは、二人の間に流れる歴史が物語っているのか。
それはそれは自然な動作だった。瑠華もそれを素直に受け取った。
「You're not hungry? Let's get something to eat.(お腹すいてないかい?とりあえず何か食べよう)」と瑠華の背中を軽く押し、それはそれは旨そうな色とりどりの料理たちが並んでいるテーブルに促す。
「Why do I have to eat with you...(何であたしがあんたと…)」言いかけて俺の方をちらりと見てくる瑠華。俺は苦笑いで頷き手をあげた。
とりあえず、この場はマックスと一緒に居た方が都合がいい、と言うことに気付いたのだろうか、小さく頷き前に向き直った。
桐島のツレの店は白い壁に、ウッディな飾りやテーブルや椅子がきれいに配置されていて洒落た店だった。いかにも若い女の子が好みそうな。
店もそうだが、並べられてる料理もどれもこ洒落ている。
テーブルはコの字に配置されていて、真ん中に開いた少し広めのスペースからそれぞれ料理や飲み物を取り分けられる、所謂ビュッフェ形式のようだ。
桐島はツレの手伝いをしているのか、白いシャツに蝶タイ、黒いベストにギャルソンの腰エプロンをしていて、こいつが一番コスプレっぽい?と場違いにもそう思った。てか囚人はどうした。
「はぁ~、これでゆっくり料理を食べられるわ」と綾子がため息。
「わりぃな綾子。相手させて」
「いいけど……」綾子はどこか腑に落ちない様子で
「あんたは何でそんなに冷静で居られるの?仮にも柏木さんの元カレよ?元サヤに戻っちゃったらどうするのよ」
と綾子の忠告に俺は苦笑。
そして、マックスが瑠華の手にした皿にローストビーフを取り分けているのを眺めて
お似合いだな、と改めて思った。
さすがレディーファーストな国なだけある。エスコートもスマートだし、気遣いも完璧だ。
エスコートされている当の瑠華は俺の方が気になるのか、ちらちらと俺を見て、ちょっと眉を寄せ悲しそうな切なそうな…複雑な表情を作っていた。



