Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「啓人、待ってたよ」と出迎えてくれたのは桐島で、俺の背後のリムジンと俺たちを見比べると目を開いた。


「すっごい登場だね。ハロウィンだから?」と桐島は目をパチパチ。


「何も言うな」


俺は手で制した。


てか桐島、縦長に長いティムには何も思わないのかよ。突っ込むとこ横に長いリムジンかよ。


「何も言わないけど」桐島は苦笑。


「柏木さん、きれいだね」と桐島は瑠華の方を見て笑いかける。


相手が例え全く害のない桐島でも


見るな!と思わず瑠華を隠したくなる。


そんな俺の子供じみた行動を全く気にせず、てかさらりとかわした?桐島は「二村くんたち三人を除いたメンバーは揃ってるよ」と瑠華に聞こえないようにそっと言ってきて


「予定通りだな」


俺は瑠華に聞こえないように桐島にこそっと耳打ち。


「ここから二時間だよ。二時間で決着をつけてよね。じゃないと修羅場?って言うかややこしいことになりそうだから」


桐島には事情を深く喋っていないが、こいつなりに勘が働いたんだろう。


俺は小さく頷き、瑠華をエスコートして、木製の洒落た扉を桐島が開けてくれて瑠華を中に促すと、


カツン…


折れそうに細くて長いピンヒールが床を鳴らし瑠華が入ると、その場にいた誰もが時間を止めた。


佐々木は勿論のこと、裕二もぽかんと口を開いている。


「柏木さん、すっごくきれいよ!」


ややあって、綾子が手を叩いて飛び跳ねた。それをかわきりに、綾子の隣で黒いシンプルなワンピースで白衣を羽織った(ホントに女医設定だったんだな)マリちゃん…(久しぶり?)も


「お久しぶりです!すっごくきれい」と手を胸の辺りで組んでちょっと興奮気味だ。


綾子の赤いベルベット素材のロングドレスもそれなりにこいつに似合っているが、マリちゃんはホントにTheハロウィン(?)て感じだな。


「マリさん、ご無沙汰しています。あなたもとてもキュートですよ」瑠華はリムジンのときあんなに笑っていたのに、その表情を仕舞いこみ相変わらずの無表情。


それは単にスイッチがOFFになったのか、それとも


この会場に


マックスが居ると分かっているからなのか―――



裕二と佐々木は瑠華のドレス姿に見惚れて言葉を失っているようだった。


裕二は俺と似たようなフォーマルスーツ。て言うかコスプレって何をしていいのか分からなかったんだろうな、俺と同じ考えだ。


佐々木は黒白幅広めのボーダーの上下スウェットと言う格好で、囚人を現しているのだろう。てか桐島の提案をそのまま受け入れたんだな、こいつは。


かく言う桐島は手伝い(?)だから仕方がないけどギャルソン風の上下。


「柏木さん、すごく


すごく……


きれいです」



佐々木が顔を真っ赤にさせながらおずおずと言う。


「ありがとうございます」瑠華はきれいに一礼したときだった。





「Hi,Ruka!」





裕二たちの背後に居た、





マックス・ヴァレンタイン






が現れ、俺は目を開き、思わず時を止めたように固まった。