Fahrenheit -華氏- Ⅱ


しかし、最初に目についたのが


ん??


電柱?こんな場所に?


俺は真っ黒の”電柱”を見て、思わず後ずさりしたくなった。


「Tim!(ティム!)」


瑠華が華やかな声をあげ、その電柱…もといマックスのボーディーガードの!?


そのティムは瑠華とハグ。


ちょ、ちょっと!そんな力強く抱きしめたら、瑠華が折れる!


と一瞬焦ったが、瑠華もティムも慣れたもので背の低い瑠華に合わせるよう、ティムがちょっと腰を落として、そして瑠華がほんの少し背伸びをして両頬にキス。


一度、写真で見たことあったけど。(※Fahrenheit Ⅱ 参照)


どう見たって190cm以上ある大柄な体系の黒人。


センスの良いスーツを着ているけれど、その上からでも分かる盛り上がった筋肉。


まさかこんなにでかくてごつかったとは。


そのティムは白い歯を見せて破顔すると……


不思議だ……笑うともっと極悪顔に見える…


「Hey,Louie! Aww, you look great!! I’ve missed you so much!! (ルーイ!会いたかった!)」


ティムは瑠華から離れたが、依然そのごつい手は瑠華のむき出しの肩に置かれている。


幾ら、”元”ボディーガードでもこうゆうのイヤだな。


と嫉妬していると、そのボディーガードことティムがこちらに振り向いた。


「Louie, who's the man over here?(ルーイ、こちらは?)」


「Well…(えーっと…)」瑠華はちらりとこちらを見て


「I'm her boss.(彼女の上司です)」俺はティムに向かって精一杯の笑顔。引きつっているがな。


ティムは探るように俺を睨んで……いや、きっと観察してるに違いない。顎に手をやり俺を覗き込んでくる。


俺は反射的に思わず一歩後ずさりした。


「啓、すみません……変な気を使わせてしまって」と瑠華は早口の日本語で眉をしかめる。


恐らくティムは日本語が分からないと見えた。


「いや、いいよ。逆に気を使ってくれてるのは瑠華だろ?俺のこと、マックスにバレないように」


薄々勘付いていた。


俺と付き合っていること、瑠華はマックスに隠し通すつもりだって。


何と言ってもヴァレンタインは神流グループとは桁違いの大財閥だ。


瑠華と復縁をしたがっているマックスにとって俺は邪魔者。


「Anyway, Tim, if you're here, does that mean he's here, too?(それにしてもティム、あなたがここに居るってことは、やっぱり”あの人”もここに?)」


瑠華は白い漆喰の壁が洒落たイタリアンレストランの中を顎でしゃくる。


「You know.(まぁね)」ティムはごっつい肩を僅かに竦めて苦笑。


困った顔はもはや殺人者だ。


でも瑠華は額に手を当て、「はぁ」と小さくため息。


俺だって「はぁ」だ。