Fahrenheit -華氏- Ⅱ



瑠華は俺と、俺の背後にある


リンカーンの黒いリムジンとを見て、思わずと言った感じで立ち止まると目を開いた。両手を口元に当て、驚愕の表情を浮かべている。


流石の俺様もリムジンを所有はしてないからレンタルだが。



「俺のお姫様、


お迎えにあがりました」



恭しく腰を折り、お辞儀をする。


傍から見たり聞いたりしたら、かなり恥ずかしいが、今日は『特別な日』にしたかった。


マックスを意識してると思えばそうだが、瑠華は毎年ハロウィンは家族そろって特別な夜だと言ったからそれ以上のことがしたかった。子供みたいだがな。


瑠華はちょっと苦笑したものの


「あたしの王子様、ありがとうございます」


俺はそっと手を伸ばした。


瑠華も手を伸ばし、俺たちの手が重なった。


リムジンから運転手が降りてきて、恭しくドアを開け、俺は瑠華をエスコートしながらリムジンの奥へと促した。


瑠華は床まで垂れた裾をきれいな動作でたくし上げながら、ゆっくりと乗り込んだ。


慣れたものだ。こうゆうのもヴァレンタイン家で身に着いたんだろうな…


「やっぱ映画の撮影だよ!」


「すっげぇホンモノ見た!」


「あの二人、女優さんと俳優さん!?見たことないけど」


「でもすっごくお似合い!きれい!かっこいい!」


と、写真を撮る人間も居るなか、俺は恥ずかしくもありながらリムジンに乗り込んだ。運転手がドアを閉めてくれる。


中は8人が優に座れる造りになっていて、広い室内は動く応接セットと言ったところか。


上質革張りのシートにガラスのテーブル。その上にすでにセットしたシャンパンクーラーと、当然ながらシャンパンのボトル。グラスが二つセットされている。


「びっくりしました」


と車内に落ち着いた瑠華が開口一番に笑う。


「だろ?ちょっとしたサプライズ」


「かなりのサプライズですがね、驚き過ぎて立ち止まってしまったぐらい」


俺も、あんなに驚いた瑠華を見たのは初めてだ。


俺は早速と言った感じでシャンパンのコルクを抜くと、グラスにシャンパンを注いだ。


リムジンはすでに発車したようで、僅かな揺れはあったものの、瑠華のドレスと同じ色合いのきれいなゴールドの液体はグラスにきちんと注がれた。


「フライングだけど、乾杯」


「かなりフライングですね。でも乾杯」


俺たちはグラスを合わせた。