Fahrenheit -華氏- Ⅱ



ハロウィンパーティー当日。


桐島のツレの店は千葉県の船橋市にあると言う。ちょっと遠いが、渋滞していなければ車で1時間弱でいける。


俺が瑠華を“車”で迎えに行って六本木の瑠華をピックアップする予定で向かう。


時刻は14時半。少し早めに設定したのは渋滞を考慮してのことだ。


「あ、瑠華?着いたよ~」と電話をすると


『分かりました。地下エントランスですか?』との質問に


「いや、正面玄関」と答えた。


『正面玄関?』瑠華はちょっと不服そうだった。


『“この格好”で正面玄関からと言うのは…』用は恥ずかしいと言いたげだ。


「だいじょぶ、大丈夫!」


と変な言い訳で、


『では、いますぐ参ります』との返事にほっ。


俺は、ヴァンパイア設定だったが、流石にマントを羽織る勇気もなく、いつもよりフォーマルなダークカラーのグレーのジャケット、ベスト、スラックスと言うスリーピース。


白いウィングカラーのワイシャツにシルク素材のシルバーグレーのタイとチーフ。タイピンはシルバーの丸い台座にブラックパールをあしらったもの。


その姿で“車体”の前に背を預け立っていると、通行人がざわざわ。


「何?何かの撮影?ドラマとか?」


「すっげぇ、はじめて見た、あんな車」


「かっこいい人!」


と。


う゛~ん…


俺の方も恥ずかしくなって、腕を組みながら思わず額に手をやり顔を隠す。


そんな中、マンションのガラスの扉が静かに開いた。


ちょうど瑠華がタワーマンションから出てくるところで俺は思わず目を開いた。


瑠華は上品なゴールド色のマーメイドロングドレスを見に纏っていた。


ハートラインの胸元から腰に掛けて斜めに細かいプリーツが施されていて、ヒップから下は上質なカーテンのようにふわりと広がる裾。切り替えの場所に上品な薔薇が飾られている。


大きめに巻いたカールの髪はハーフアップにしてあって、ドレスと同じようなデザインのコサージュが品よく位置している。


まるで陶器のような滑らかな白い華奢な肩。適度なボリュームのある胸元。それは決して下品ではなかく、むしろ社交界デビューを果たしたレディーそのもの。


気品があり、気高く―――





美しい。




俺の




お姫様。