Fahrenheit -華氏- Ⅱ



帰りは俺が運転した。


「久しぶりの遠出で疲れたろ?それに俺、一回LFA走らせてみたかったんだ」と言うと、すでに運転席側に向かっていた瑠華は車のキーを放って投げ寄越した。


俺はそれを何とかキャッチ。


「Nice catch!(ナイスキャッチ)」瑠華は笑うと「お願いします」と言って助手席の方へ大人しく回りこんだ。


俺のマンションに着くと、俺は運転を瑠華とタッチ交代。


「泊まっていく?」とも俺は聞かなかったし、


瑠華も「泊まっていきたい」とは言わなかった。


だから俺たちはマンションの前で別れることになった。


エンジンを掛け、LFAが立ち去ろうとしているとき、俺は運転席側の窓にバンっと手をついた。


瑠華がちょっとびっくりしたように目を広げる。





「瑠華、またね」





『何言ってるんですか、明日また会えるじゃないですか』と瑠華は返してこなかった。


無言で、しかしちょっと微笑を浮かべ頭を下げるとLFAは立ち去って行った。


俺はその白い車体が見えなくなるまで、ずっとずっと……その後ろ姿を見送っていた。



――――


――


次の日、当然のように俺たちは何事もなかったかのようにいつも通り出社した。


いつもの光景、いつもの業務、いつものやり取り。


淡々と、しかし確実に時間は過ぎていきあっという間にハロウィンパーティー前日になった。


「明日、16時お店集合でしたよね」と佐々木が切り出し、俺はちょっと隣のブースを覗き込むと、魔王二村の姿は無かった。それをしっかり確認して


「おうよ、遅刻すんなよ」俺が念押し。


「分かってますよぉ。僕、自慢じゃないですが遅刻なんて一度もないじゃないですかぁ」と佐々木が唇を尖らせる。


「皆勤賞ですものね、素晴らしいです」と瑠華が佐々木を見ると佐々木は照れくさそうに頭の後ろに手をやった。


「じゃ、俺らもそろそろ仕事終わりにすっか」


時刻は夜の21時。


「じゃぁまた三人で飲みに…」佐々木は言いかけたが


「今日はゆっくりしたい」と俺が言い、瑠華も「私も準備があるので」と二人に断られシュンとしていた佐々木に


「いいか?16時集合だぞ?間違えんなよ?」と佐々木に言い置いて、俺も帰り支度をした。