瑠華が目をまばたく。
「どうしたんですか、そんな真剣に」瑠華が微苦笑を浮かべる。
「どうしたって?ありのままを言っただけだよ」
俺は瑠華を引き寄せると、その華奢な体を精一杯抱きしめた。
彼女の頭を抱き寄せ、髪の中に手を入れ、頭部に俺は頬を摺り寄せた。
瑠華の髪から芳しい花の香りが香ってくる。
瑠華が俺の背中に回した手できゅっと俺のニットを握る。
「啓の体温―――
香り―――」
好きです
俺の胸の中、その言葉はくぐもって聞こえたが、同時に今までにない愛情を感じた。
二村から取り引きを持ちかけられ、それから俺は瑠華を疑いの目で見ていた。魚眼レンズのように、世界は途方もなく広くて、だけど歪んで見えた。
でも今、俺の前に居る瑠華は魚眼レンズのような途方もなく不可思議な世界の視界ではなく、疑いようもなく彼女そのもので、
俺は―――、一体、何を見ていたのだろう。と思い知らされた。
心音ちゃんは裏サイトの件を否定はしなかった。ヴァレンタインをあぶりだすことも否定しなかった。
でも―――同時にこうも思うんだ。裕二があの裏サイトのIDとPW探ろうとしていたとき、裕二のPCにウィルスが送り込まれた。間違いなく心音ちゃんの仕業だろう。あのとき瑠華は心音ちゃんと紫利さんと女子会だと言っていたが、裕二が探っていたのはものの5分と満たない時間だ。
それだけの時間なら「ちょっと用」とか言って抜け出すことも可能だろう。
だけど、裕二には探られないよう強力な…裕二は威嚇程度だと言っていたがウィルスを送っておいて、二村が簡単に見つけられた―――そのことが腑に落ちない。
裕二のPCに簡単にウィルスを送りつける心音ちゃんが、そんな分かりやすい裏取引のサイトを作るとは思えない。同様に発起人として名が載っていた瑠華も共犯者だろうが、あの二人なら誰もが欺かれる程、絶対に成功する程緻密なものに仕上げるだろう。
つまりあれは―――誰かを陥れる為の罠だ。
誰か―――と言うのはきっと二村のことだろう。



