Fahrenheit -華氏- Ⅱ


どれぐらいそうやって無言でその光景を眺めていただろう。


やがて陽が傾きはじめて、


「そろそろ行こうか」と俺の方が切り出した。「まだ、海入ってないだろ?泳ぐとかは流石にできないけど、波打ち際なら大丈夫じゃね?」


俺の提案に瑠華は黙って頷いた。


手を取り合って白い砂浜を歩く。


瑠華は上品な色合いのモカブラウンのパンプスを手に素足で、俺もスニーカーと靴下を脱いでついでにパンツの裾もまくり上げ、二人して裸足で歩いた。


後ろを振り返ると、瑠華の小さな足跡と俺の足跡がプライベートデッキから連なっていて…


それをじっと見つめていると


「わっ」


瑠華が小さな声をあげた。思わず瑠華の方を見ると


「冷た…」瑠華が片足を上げ、けれど恐る恐ると言った感じで再び水面に足をいれる。


ちょうど、ゆっくりと陽が落ちるときだった。


淡いオレンジ色の光が水に反射してキラキラときれいだった。


でも、もっときれいなのは


その淡いオレンジの光の中、幻想的に浮かび上がる瑠華の姿だった。


グレージュのニットワンピ、ウェストから上はニット素材で、切り返しのスカートは二重素材になっているのかフレアシルエットで日が当たる度、ほのかに透ける。


その裾や、瑠華の品の良い栗色の髪が風になびき、





「きれいだ」




俺はほとんど無意識で言っていた。