Fahrenheit -華氏- Ⅱ


コンビニで買ったホットスナック、イカフライを瑠華に手渡し(普段は食わないが、たまに外回り中時間が無い時に買ったりする)


「旨いんだって、食べてよ」と言って、瑠華に押し付け、瑠華が受け取ろうとした瞬間だった。


バサっ!


突如大きな音がして、


「キャッ!」瑠華が短い悲鳴をあげた。


俺もびっくりした。


黒い塊が俺たちを襲ったかと思うと、それは一瞬で消え去った。


咄嗟の事で思わず瑠華の頭を胸に抱き寄せ、彼女を守るように庇いながら空を仰ぐと、


「トンビ…?」俺は目を丸めた。


「え…?」瑠華が俺の腕の中同じように空を見上げて


「イカフライ、トンビに連れ去られた」と呆気にとられて言うと


「啓、怪我は?」と俺の手を握る瑠華。


確かにトンビの爪は結構な威力だろうが、それはそれは器用にピンポイントにイカフライだけをきれいに持ち去って、俺の手はおろか瑠華もどこも怪我をしていないことにちょっとほっとした。


そして二人同時に笑った。


「貴重な体験をしました」


「俺だってはじめてだ」


その後海岸を歩きながら「Sunny Funny Days(サニー ファニー デイズ)」と言うプライベートデッキを見つけた。


普段は予約制だと言うが、この日たまたま予約が入ってなかったみたいで(時季が時季だからか?)、運良く屋上テラスデッキを案内してくれた。


そこでデッキチェアに座り、アイスコーヒーを飲みながら、しばらく二人で海を眺めた。


静かだった。


とても。


白い砂浜を滑る波音が耳に心地良い。


しばし、俺たちは無言だった。


あまり無言とか、そう言うことはなかったから、逆に沈黙するとキマヅクて俺の方からあれこれ話すのに、今はただ黙ってこの美しい光景を瑠華と共有するのが何より幸せだった。