Fahrenheit -華氏- Ⅱ


出発してから1時間半で目的地に着いた。


昼どきだったし、腹も減っていた。


俺たちはすぐに食事が出来る場所を探したが、意外と無いもんだな。


ようやく見つけたイタリアンはランチ時とあってか満席。


仕方なく、近くのコンビニでおにぎりやらホットスナックを買って海水浴場のビーチで食べることに。


ビーチは白く美しい砂浜が広がっており、まるで南国リゾートに来たような気分だ。海の水の透明度も高い。


「すみません、リサーチ不足で」


と瑠華はブランドもののハンカチを砂浜に敷き、おにぎりを両手で包みながら俯く。


仕事では一切のミスがなく、常に先回りしている瑠華が珍しいと思ったが、同時に新鮮でもあった。


完璧な人間なんていない。逆に完璧じゃないところがいい。


「いいジャン♪海見ながら食事って最高じゃね?」と、鮭おにぎりのビニールを取り去りぱくついていると


「すみません」とまたも俺の方を見た瑠華。「気にしなくっていいって」と苦笑したが


「いえ、このおにぎり、どうやって剥くのですか」



「え!?」

「え…?」



目を丸めて瑠華を見ると、瑠華は恥ずかしそうに唇を尖らせる。


「もしかしてコンビニおにぎりデビュー?」


「もしかしなくてもそうです。サンドイッチにした方が良かった」とよっぽど恥ずかしかったのか瑠華がぷいと顔を背ける。


「何でよ~、そうゆうとこも好きだし。もっと頼ってよ。小さなことでも」


俺は瑠華の手からおにぎりを取り上げ、ビニールのシートを取り去ると海苔を巻いた。


「はい♪」とご機嫌に渡すと、


「なるほど、素晴らしい造りですね」とおにぎりよりもビニールのシートの仕組みに興味を持った瑠華ちゃん。出来上がったおにぎりを上から下からあちこちの方向からしげしげと眺めている。


だからな何なのよ、その……


「……可愛い…」


ボソッと一言言うと、俺の声は白い砂浜をいったりきたりしている波の音でかき消されたようだ。


「え?」瑠華が聞きなおしてきて


「ううん♪何でもな~い」


「嘘、何か言ったでしょう」瑠華が疑うように目をあげる。「どうせ、こんなことも知らないのか、とか何とか」


ぷっ


俺は思わず吹き出した。


「何ですか」瑠華が目を吊り上げる。





「いや、可愛いな、って思って」




今度は波の音にかき消されることなくはっきりと言うと、瑠華の白い頬はほんのちょっと赤く染まった。