Fahrenheit -華氏- Ⅱ


その日俺はマンションに帰りシャワーを浴びると、ビール一本であっけなく眠りについた。


昨日裕二の家で殆ど寝てなかったからなのか、色々疲労が溜まっていたからなのか。


瑠華は11時に迎えに来る、と言うことでシャワーを浴び髪をセットして、最近ちょっと寒くなってきたからネイビーのV開きニットと黒のパンツと言うシンプルな服装で


「こんなもんか?」と姿見で確認していると


~♪


俺の携帯が着信を報せた。


着信:♥瑠華♥


になっていて、慌てて取るとマンションの下に到着した、と言うことだった。


慌てて降りて行くと


白いLFAの天井に両腕を乗せ、少し濃い目の色のサングラスをした瑠華が


「Hey! over there cool guy.(そこのクールガイ(素敵な彼)あたしと一緒にドライブしない?)」とサングラスを取り払いながら茶目っ気たっぷりで言ってきて、俺は思わず笑った。


まるで海外ドラマに出てくる女優のような仕草が妙にさまになっている。


「It's an invitation from a hot girl, so I'd better go.(イイ女のお誘いだから行かなきゃ損だな)」


と返すと、瑠華は助手席の方を顎でしゃくる。「Let's go(レッツゴー)」


「どこへ行く?」


車に乗り込みながら瑠華に聞くと


「ちょっと遠いですが神奈川県の一色とかどうですか?」と聞かれ


海とか定番な気がしたが、それでも瑠華と行く海ははじめてで、当然


「いいね!」俺は頷いた。


ここからだったら首都高速を乗り継いで1時間弱、と言うところだ。


目的地に着くまで大きなSAが無かったこともあったし、休日だからか適度に渋滞していて結局まっすぐに目的地に向かうことになった。


瑠華の運転はうまいほうだった。決して飛ばすこともなく、かと言って慎重過ぎる程でもない、無理な車線変更もしないし、ほとんど左車線。


女の車で、女の運転で俺が助手席って―――俺、初めてだ。


それが何だか新鮮だった。瑠華もいつもこんな気持ちなのだろうか。


新しい何かを経験して、その都度「新鮮」と感じるのだろうか。


俺たちは―――はじめて会ったときから場所は違えど、同じスピードで同じだけ成長して、


大人になって。


でも、もし時間を巻き戻せる時計があったのなら、俺は7歳の自分に戻りたい。


“初めて”君に恋したときから。