Fahrenheit -華氏- Ⅱ


悩んだ末、食事は中華に決めた。


ちょっと高級志向な店で、幸いにも客はまばらで落ち着いた半個室の席でターンテーブルを回しながら、瑠華は紹興酒に満足していた。


「ターンテーブル、実ははじめてです。大勢で囲むイメージがありましたが、二人でも充分楽しめますね」と瑠華は微笑む。


「瑠華の“はじめて”が色々俺で経験させてあげられて、俺も嬉しい」と素直な気持ちだ。


この先―――瑠華の色んな“はじめて”を体験するとき、隣に俺が居たい。


食事をし終えた後、やはり二人手を繋いで……離れまいと言う意味でいつもより強く手を握り


「啓、痛いです」


前を向いたまま瑠華が言い


「うん。俺の愛の強さ」


俺も前を向いたままさらに力を籠めた。


――――

――


行き来た車に乗り、今度はゆっくりと下道を走らせ、六本木に到着したのは22時を少し回っていた。


「遅くまで付き合わせてすみません」


「ううん、楽しかったし。明日も―――」


楽しみだ、


と言う言葉は俺が自ら瑠華にキスをして伝えた。


「外ですよ」と瑠華は苦笑をしていたが


「地下だし誰も見てないよ」と瑠華の頭を撫でる。


瑠華はちょっと考えたのち


「そうですね」と短く言い、今度は瑠華の方から俺にキス。


柔らかい唇が離れていき、瑠華はシートベルトを外した。


「それではまた明日」


軽やかに言って瑠華は車を降りる。


「うん、また明日」


俺も軽く手を振った。




『また明日』




と言う言葉を言える日はあと一体何日残っているのだろう。