Fahrenheit -華氏- Ⅱ


5階の展望デッキで、次々と離陸していく飛行機を二人して眺めた。


やがて白い機体にUNITEDと青い文字で書かれた飛行機が飛び立ち、ゆっくりと離陸して空に向かい雲の上に入るまで瑠華は手摺に両手を置いて、その様子をじっと見つめていた。


白い機体が完全に見えなくなると、手摺に置いた手をゆっくりと伸ばし


「今日はゆっくり眠れそうです」とぎこちなく笑う。本当は―――寂しいだろうに…


何もかもNYに捨ててきたと瑠華は言ったけれど、心音ちゃんのことはこの先ずっと捨てないし、忘れないだろう。


最初は何で二人が親友なのか分からなかったが、二人には二人の固い絆がある。


それは共通してヴァレンタインと言う名の強敵を倒す、と言う目的以外―――ずっとずっと深くてあったかい。


「俺も久しぶりにゆっくり寝れる」俺は瑠華の頭を軽く撫で、「気晴らしにドライブでも行く?」と提案すると


「ドライブはあたしの車で、と決めていたでしょう?」


「そうだったね」


「急ですが、明日とかいかがですか」


明日?また急だな。


ちょっとびっくりして目をまばたいていると


「来週はハロウィンパーティーもあるし、これ以上寒くなると外でゆっくりできませんので」


と言われ


「そうだね」俺も頷いた。「今日は瑠華もゆっくりしなよ、明日車でそっちに行くから、瑠華の車で入れ替えて…」と提案したところ


「たまにはあたしが迎えに行きます。啓はギリギリまでゆっくりしていてください。この一週間振り回してしまったので」


瑠華はちょっと笑う。


俺も笑い返した。


「それも新鮮でいいね」


明日の約束も決まって、俺たちは手を繋ぎ合って空港内を歩いた。


帰り道、腹も減ったと言うことで空港で食事をすることにした。


色々店を探していたとき、さっき瑠華が休んでいた和風喫茶の店を見つけた。


俺が心音ちゃんに何か言いたそうにしていたこと、そしてそれについて瑠華が気付いていたこと。


心音ちゃんと俺が二人きりで何を話していたのか気になるだろうけど、瑠華はその内容を聞いてこなかった。