「嘘だと言えよ!軽いお遊びだったって!」
俺は思わず心音ちゃんの華奢な両肩を掴んでいた。そのふしに買い物カゴが俺の手からすり抜け、床にドサリと音を立て中身が散らばる。
「お遊び?だとしたら相当悪質ね」心音ちゃんは無表情に言った。
それは瑠華が日本に来たときと変わらぬ表情。
何も―――読み取れない。
「ケイトの推理は当たってるわ。でもどうしてそう思ったわけ?」
心音ちゃんは俺の手を、小さな虫が肩に乗ったと言う感じで軽く払った。
力のなくなった俺はだらりと腕を下ろし
「二村が……取引を持ちだしてきた……」
俺は二村が持ちかけてきた“取引”の内容を聞かせた。最後まで言い切らず
心音ちゃんは目を吊り上げて、
「その条件を飲むって言うの?」と低く聞いてきた。
「それしか方法がないんだよ!瑠華を守るには!」
我知らず、叫んでいた。
土産物屋に居た買い物客が何事かこちらを注目する。
その注目を浴びている中、
パチンっ!
小さく音が鳴ったと思ったら、俺の頬に熱いものが走った。
心音ちゃんが俺の頬を平手打ちしたのだ。
「何があっても瑠華を守るって言ったのは嘘?
あんたの方が大ウソつきだわ」
白けた目で心音ちゃんがさも「幻滅した」と言いたげに顔を逸らす。
目も合わせたくない、と言った具合だ。
心音ちゃんは―――怒っている。



