心音ちゃんは一瞬無言になり、けれどすぐに笑顔を浮かべ
「瑠華から聞いたの?」と、さらりと聞いてきた。
「いや、彼女から言ったわけじゃない。俺が聞いた」
「そ」
心音ちゃんはそれ程気にしていない様子で、土産物選びを再開させた。
瑠華曰く、心音ちゃんはこの話を話したがらないようだった。それをジョークに例えたとは言え、俺に何で言ってきたのだろう。
その心情を知ったところで何もできないし、何かをしようとも思わないが。
「マーズフェイスって会社も存在してるだろうし、実際その社名で心音ちゃん仕事をしている筈だけど、殆はフリーみたいなもんだろう?
CEOなんて、それも嘘だろ」
俺はあくまで冷静にさらっと言うと、心音ちゃんは怪訝そうな顔をつくって
「何でそんなこと聞くの?」と顔を歪める。
「出どころは言えないが、ある所からの情報」そっけなく言い、俺は心音ちゃんから顔を逸らした。
「ふーん、ま。出どころなんて気にしないけどね」と、心音ちゃんは本気で気にしてない様子。
「心音ちゃんは、嘘ばかりだ。
何が本当で何が嘘なのか、俺には分からない」
「別に、知る必要はないんじゃない?」
心音ちゃんは饅頭が連なる列を眺めていたが、またもふと顔を上げた。その物言いが瑠華に似ていた。
「あたしはNYに帰るし、たぶん会うことはないと思うし。
それより、他に何か聞きたいんじゃないの?」
逆に聞かれ、虚を突かれた。
「―――え?」
「何か聞きたそうにしてた。それも瑠華の前では話せない話」
正直、心音ちゃんがこう切り出してくるとは予想外だった。
「ケイトってわっかりやすっ~いし、たぶん瑠華も気付いてるわよ」
瑠華も……?
でも敢えて、それを聞かず心音ちゃんと俺を二人きりにしたってこと?
俺の考えは二人の女に見透かされていたが、俺の方は二人が何を考えているのか全く読めず、
迷ったのち、
「桂林のリゾート開発のオークション、あれも嘘だろ。
HPの裏サイト見た。スペシャルオークションて名の怪しげな…
裏取引で、発起人は瑠華の名前になっていた。
あるツテでそのHPを作った人物のIPアドレスを辿ったら心音ちゃんだったって聞かされた。
そのサイトに名乗りを上げている名前を目にした。
ヴァレンタインだ。
二人が結託してヴァレンタインを引きずり出そうとしてるんじゃないか」
俺はまっすぐに心音ちゃんを見て言い切った。
心音ちゃんも目を逸らさなかった。
そしてそれを否定しなかった。



