別に、同じ部署の同僚だから話していても何も問題ないし、特別視することはない。けれど話の内容は明らかにプライベートなもので、充分に気を付けていた。
けれど変に気が張っていたのか、俺は
後ろに突っ立って、にっこり似非クサイ笑顔を浮かべた
二村
を見て、ごくりと生唾を飲み込んだ。
二村は相変わらず人懐っこく、瑠華に手を振っている。
「柏木さ~ん、佐々木さんが呼んでたよ」
「そうですか、ありがとうございます」
瑠華は小さく一礼し、俺と二村の間を通り抜けようとした。そのふしに二村は瑠華の華奢な手を掴んだ。
「柏木さん、高そうな指輪してますね~、“彼氏”に買ってもらったんですか」と瑠華の右手薬指をしげしげと眺めている。瑠華は気味の悪い何かを見るような目つきで
「いいえ、自分で買いました。あの……離し…」
瑠華の言っていることは本当のことだ。
でも―――
「その手を離せ」
俺は二村の手首を強く掴んだ。
「ど…どうしたんですか~?そんなこっわい顔して」と二村はへらへらと笑う。
「煩い。手首を折られたくなければ柏木さんからその手を離せ」
俺の威嚇に二村はあっさりと瑠華から手を離した。
「ちょっとしたジョーク?って言うのか、スキンシップですよ、やだな~本気になっちゃって」
「セクハラだ」俺がつっけんどんに言うと
「じゃぁ部長の『手首折る』発言はパワハラですよね♪」
二村の返しに一々苛々くるが、ここでまともにやり合う気はない。
「すみません、俺も飲み物取りに来たんです」二村はそう言い冷蔵庫に向かって行くと、瑠華と同じ種類のスムージーを取り出した。
「外資物流で流行ってるんですよね、これ。気になったんで俺も買ってみました」
二村はまたも意味深に笑い、俺は瑠華の肩を軽く押し
「行こう」と促した。
二村の行動や発言は―――明らかに俺に対しての挑発だ。



