バンッ!
俺は乱暴な手つきでハンドルを叩いた。
その音が真咲に伝わったのか
『あの件は…』と真咲が声を低めた。『“お前ら”てどう言う意味?あたしの他にもそう言ってくる女がいるの?』
女じゃねぇけど、
これ以上は聞きたくなかった。
「今はその話を聞きたくない。勘弁してくれ」
俺は弱々しく言った。ハンドルに手をやり項垂れる。
真咲は電話の向こう側で少し黙ったのち、やがて静かに切り出した。
『あたし…あんたと別れてからしばらくどこでどう間違えたのか考えてた。どうしてこんな風にすれ違ってしまったのか考えた、
でも、間違いじゃないだってこと、最近気づいたの。
菅井と出逢ってから、あたし―――彼の優しさに包まれ、だから間違えてなかったって思えた。
間違いなんて―――無かった。
あたし、啓人と間に間違いなんて無かったと思う』
真咲はきっぱりとこう答えた、
俺は―――真咲の今の言葉で少しだけ、救われた気がした。
不思議だな、別れて数年経ってるのに、真咲が現れるまでその存在すら薄れていて、現れたら現れたで憎くて仕方なかったのに。
今、俺ははじめて本来の真咲の優しさを思い出した。
「俺も―――間違えてなかったって……思いたい」
『じゃぁそう思えばいいんじゃない?あたしの知ってるあんたはまっすぐで、迷いが無かった』
「あのときと状況が違うし、社会人としての責任がある」
『社会人として―――ね……』真咲は意味深に言葉を低め、それでも小さく息を吸い込み
『とりあえず、菅井が持ってきてくれたオークションの件、ありがとう。伝えたかったのはそれだけ。“でも”の続きは、分不相応じゃないか、って聞きたかっただけ』
俺は前髪をくしゃりと握り
「分相応だよ、柏木さんが見つけてくれたんだから、彼女なら絶対セリ落とす」
『随分な信頼ね。まぁ、こっちとしては二人の関係はどうでもいいし、結果が残せればそれだけで充分だから』
「あっそ、わざわざどーも」俺は皮肉げに言って「じゃぁな」と言って電話を切ろうとしたが、思い直って
「体、大事にしろよ」
と言いたかったが、すでに通話は切れていた。



