午前中に2件営業回りをして、11時近くになった。あと一件行けるかな…と書類と地図のルート計算をしていると
TRRRR!
流石に仕事中まで電源を切れないからな、今朝電源を入れたが
ディスプレイに表示された文字を見て、
俺はまたも額に手を置いた。
着信:真咲
こっちは流石に無視と言うことはできず
俺は結局その電話に出た。と言うか取らざるを得ない。
プライベート用の携帯だから
「はい」とそっけなく電話に出ると
『あ、あたし』と俺が知るいつもちょっと勝気な物言いの真咲が名乗った。
今度は何だよ、二村と言いお前と言い……と言いたかったが、何とか堪えた。
『……菅井と会ったんだって?』
と真咲に聞かれ、虚を突かれた。
「……うん、まぁ流れで…」
『彼、楽しそうだったわ。何の話をしたか教えてくれなかったけど、あんたって意外と面白い人だって言ってた』
「そ?それなら良かった」
当たり障りのない返答を返し
『菅井が持ってきたオークションの件……』と切り出されたとき、何故か胸が強く打った。
瑠華が見つけてきたアメリカのこれまた有名な大型家具店のオークション。
瑠華が桂林のリゾート開発の裏オークションの隠れ蓑として利用した、と思いたくない。
あれだけは誠心誠意向き合って、瑠華の完全なる善意だと思いたい。
「何?不審な点があった?」動揺を隠したいのに、だからか焦って墓穴を掘ってしまった。
『不審…?何も…。だけど…』
言いかけて
「『だけど』何?“例の件”とは別の話だって言いたいんか」
違う…
こんなことが言いたかったわけじゃない。
「俺がお前に恩を打っておけばお前が“取引”を取り下げると思ってたのか」
違う…
真咲は電話の向こうで何も言わなかった。
「お前が言い出したんだろ!瑠華との仲を清算しろって!!
えっ!
ああ、俺は行き詰ってるよ!お前“ら”のせいでな」
違う!
それにこれは俺の完全なる八つ当たりだ。
真咲は―――今、妊娠していて不安定な時期にある。
俺が怒鳴ったことで流産でもしちまったら俺は“二度目”の過ちを犯すことになる。
けれど、
止まらない。



