Fahrenheit -華氏- Ⅱ


裕二のマンションから広尾の神流グループ本社まで電車移動で20分て言うところか。


山手線で品川から恵比寿へ、そこから東京メトロに乗り換え広尾へ到着。


徒歩も合わせたら40分近く掛かった。


久しぶりの電車通勤は、疲れる。ぎゅうぎゅう詰めの山手線と東京メトロはそれだけでエネルギーを吸い取られる。


それを毎日通勤してるって言うから裕二を尊敬するよ。


受付入り口で従業員カードを読み取り機にかざそうとしていると


「おはよ~」とのんびりした桐島の声を聞いて


「おう」裕二は普通に慣れた感じで挨拶。


「啓人、珍しいね、この時間帯。会ったの初めてじゃない?」


確かに…


「俺と裕二、割と一緒の電車になることが多いみたいで結構被るんだよね」


あー、なるほど。


「ところで桐島」俺は真剣な顔で桐島を見ると「ん?」と桐島は聞き流し、カードをかざそうとしている。


「お前んちの朝飯何?てか今日何食ってきた?」


「今朝?変なこと聞くね。ミネストローネとトースト」


やっぱり!


「お前、大丈夫か?」と裕二に心配され、聞かれた桐島から怪訝…と言うか気味悪い目つきで見られながらも各々自分のフロアに出勤すると瑠華は勿論だが佐々木も出勤していて


「おはようございます、珍しいですね部長がこんな時間に出勤って」と佐々木がのんびり時計を見やる。瑠華は相変わらずこの時間に出社した理由を訪ねてくることはなく


「おはようございます」と、淡々としている。


「あー…、ちょっと昨日裕二と飲んでたらあいつんちで潰れちまって」と俺は適当に言い訳。妙に説明くさくなったが、半分当たってて、半分嘘。


「へー、珍しいですね。部長が潰れるって。相当飲んだんですか」と佐々木は世間話のように聞いてくる。


「まぁね」俺は適当に返し、デスクの席に腰を下ろした。


瑠華はいつもと変わらない様子で淡々とPCに向かい合っていた。その姿を視界の端で捉えたものの、今は何故か瑠華の方を見れない。


就業時間が始まり、俺は瑠華と佐々木に


「今日からテレアポはいいよ」と提案すると


「え?どうしてですか?」と佐々木が答える。瑠華はちらりと顔を上げた。


「二人が取ってくれるのは嬉しいけど、結構な数だ。営業回りする俺にも限界がある。少し時間を置いて、今ある案件を固めてから再開させよう。俺は営業行ってくるから、俺がまとめた案件の稟議作業に掛かって欲しい」と提案すると


「分かりました」と素直だがそっけなく言う瑠華。


俺の不審な言動に疑いを持っていないように見えたが、いつもこんな感じだし、その無表情の下に何を隠しているのか……分からなかった。