Fahrenheit -華氏- Ⅱ


その後、部屋の明かりを灯して、キッチンカウンターに置いてあった焼酎を勝手にグラスに注ぎ、ストレートで一気に煽った。


タバコを吸って気分を落ち着かせようとしたが、それでも昂った神経を鎮めてはくれなかった。


テレビを点け、真夜中のくだらないバラエティ番組を一晩中眺めていたが、その音でも裕二は起きだしてくる気配はなかった。


そうして朝を迎え、泊めてくれたお礼に……と言うかテレビ番組に飽きて、俺は裕二の為冷蔵庫にある有り合わせの食材で朝食を作った。


白米と、キャベツとワカメの味噌汁。出汁巻き卵ぐらいしかできなかったが


「はよ~」とボサボサ頭で欠伸をしながら寝室から出てきた裕二は、俺の作った朝食にちょっとびっくりしていた。


「何だよ、これ。お前が作ったの?」


「俺じゃなきゃ誰が作る。朝飯の妖精が作ったって言うんか」わざとチャラけて言うと


「いや、旨そう」


裕二はそう言って起き抜けなのに、ガツガツそれを食いきれいに平らげた。裕二が朝飯を食ってる最中


「お前は?食わないの?」と聞かれたが


「食欲ない」とそっけなく答えた。裕二は気を悪くした様子もなく「そ。久しぶりにまともな朝飯食ったかも」と言って満足そうだ。


てかお前、普段、朝何食ってんだよ。


俺は朝飯食わない方だから気にならないけど。


「啓人って変な所器用だよな。飯うまいし」


「変な所って言うな。まぁ桐島んとこに比べたらしょぼいけどな」


って…桐島の家庭の朝食を知らないが。


イメージすると、スクランブルエッグに、ボイルしたソーセージ。トーストに手作りジャム。旬の野菜のサラダとポタージュ…いや、ミネストローネぐらい出てきそうだ。


マリちゃんも幸せものだな。


と、バーチャルしながらあっという間に時間は過ぎ、俺は結局裕二と出社することになった。