Fahrenheit -華氏- Ⅱ


裕二の部屋、リビングには大小様々なノートPCが三台とデスクトップ型のPCが一台あるせいか、若干の寒さを感じた。


サーバーの発熱を防ぐためにエアコンを入れているのかと思ったが違うようだ。


つまりこの寒さは俺が感じる体感温度ってことか、それとも心情的なものなのか。


「調べて欲しいことがあるんだけど」


俺が切り出すと


「何を?」と当然聞かれるわけで。


「詳しくは言えない。桂林のリゾート開発のHPを出してくれないか」と頼むと、裕二はちょっとため息をついたけれど、それ以上何かを突っ込んでくることもなく大人しくPCを立ち上げ、すぐに検索エンジンで調べてくれた。


出てきたのは最初、二村が見せてくれた何の変哲もないHPだ。


「これがどうした?」


「この隅にURLがあるだろ?これクリックしてみてくれないか」と頼むと


「ホントだ、こんな所に?」裕二はメガネの奥で目をまばたいている。それでも大人しく俺に言われた通りクリックをして、現れたのは―――


「何だこれ」


黒い背景に「Special auction club」と金の文字。いかにも怪し気なベネチアンマスクが浮かび上がるサイトに飛び、裕二が再び目をまばたく。


「このサイト、IDとPWが無いと入れないんだ。探れるか?」


手短に聞くと、裕二は一層怪訝そうな顔つきで俺を見据えてきた。


「何なの、これ。ヤバイやつじゃねぇの?」


色んな意味でヤバイやつだが、クリックしたところで何も起こらない。


「大丈夫だって、開いても何もない。けれど俺は入れない。お前に調べて欲しい」と真剣に聞くと、裕二も単なる“お遊び”じゃないことを悟ったのか、小さくため息をつき


「やってみるけど、どこまでやれるか分からないぜ?」と言い置いてキーボードに手を滑らせた。