でも実際『紫利さん』をはじめて見たとき、納得した。
啓がいっときであれ“恋”……と言うべきなのか、はたまた何か違う感情なのかを抱いたひと。
嫉妬していたあたしがバカみたいだった。
「あなたたちからしたら、こんなおばさん相手になるかどうか分からないけれど」
目の前の紫利さんは苦笑しながら口元に手を当てる。流れるような優雅な仕草。
「そんなこと…」と言うと
「ユカリ~~!」
と、ひょっこり心音が姿を現した。両手を広げて小走りに来ると、キュっと軽いハグ。
「あらまぁ、嬉しいわ」と紫利さんも心音の背中に手を回す。
そして
「Japanese Kimono!Wow、ホンモノ見たわ!It's beautiful!」
心音は紫利さんの周りをうろうろ。
「心音、失礼でしょ」心音を引きはがして
「いいのよ、嬉しいわ」とどこまでも大人な対応の紫利さん。
あたしはきっと―――この人にはいつまで経っても追いつけない。
けれど、追いつけないことを悲観はしていない。目指すべき女性だ。
それにしても…啓の周りには素敵な女性がたくさん。綾子さんもステキだし、紫利さんもステキだし。
「ね、源氏物語って知ってる?」
紫利さんに突如として聞かれ、あたしは少しだけ首を捻った。あまり詳しくは知らない。
「光源氏が後生愛していたのは唯一“紫”と言う女性。光源氏を啓人と例えると―――」
それって―――“紫”は紫利さん…
と思ったけれど
「あなたよ」
紫利さんが微笑を浮かべ
「きっと私たちの関係は“紫の上”と“明石の君”と言った関係かしら」
アカシのキミ―――
漢字がうまく変換できなくて首を捻っていると
「私たち、いいお友達になれる、ってことよ」
紫利さんは微笑む。
いい―――お友達になりたい。



