Fahrenheit -華氏- Ⅱ



アルコールが入ると、少しは饒舌になるかと思って俺は焼酎を頼み続けた。


注文してはあっという間に飲み干し、注文しては飲み干し、の繰り返し。


流石に酔うわな。


途中で


「あの、部長…もう今日は帰りましょう」


瑞野さんが切り出し、


いくらか酔っていた俺は


「え?もぉ?」と答えた。


「……ええ、酔っぱらってらっしゃるようなので…」


「酔っぱらってる?この俺が?こんな安い酒で。安い酒だから酔うのか」


へらへらと笑うと


「お会計、しましょう」と言って瑞野さんは俺の答えを聞かずしてベルスターを鳴らし、店員にチェックを頼んでいた。


肝臓は完全に酔っていたが、脳はしっかりと覚醒している。


俺は伝票を受け取り、その数字が思いのほか少なかった。


俺は万札を一枚取り出し「釣は要らない」と言って手で払った。


「いえ!でも…多すぎます」


確かに店員が提示してきたのは8,000とちょっとだった。


「良いって、イイって」俺はまたもへらっと笑い、危うい足取りで立ち上がった。


「部長っ」すぐさま瑞野さんが俺を支えてくれる。


「大丈夫、子供じゃないんだからさ~」と変な言い訳で瑞野さんと距離を取る様に手で制する。


俺の後を瑞野さんがハラハラした面持ちで追ってきた。


「ありがとうございました!」


「臨時収入♪」俺は店員を指さし小さくウィンク。「って、少なすぎるかぁ。オモテナシありがと。迷惑料(二村と喧嘩したこと)ってことで」


さらに一万円札を店員に手渡すと、流石に店員もぎょっとしていた。


「いえ、ホントにいただけませんから」


「じゃぁさー、傘貸してくれる?ほれ、雨……降ってる」


俺が空を仰ぎ見ると、シトシトと音を立てて、空から降ってくる水滴が俺の頬を打っていた。


雨……