「こうゆうの、何て言うんですかね。“粉飾決算”とはちょっと違うな……
詐欺師って言った方が合ってるのかなぁ」
二村がのんびり言い
「黙れ!」
俺はテーブルを強く叩いて残ったウーロン茶を二村にぶちまけてやった。
「冷たっ」二村がおしぼりで顔やスーツをゆっくりと拭く。その動作はどこか飄々としていて余裕まで感じられる。
「ビールじゃないだけありがたいと思え。第一証拠がない。IPアドレスが心音ちゃんだった、と言う証拠だ」
「これを見てもそう思いますか?」二村はぺらりと一枚の紙を取り出し、俺はそれをひったくっった。
A4サイズの紙には
『C:\Usera\xxxxxxxx>ipconf ig/all
Eternet abapter local area.
Phys ical Address・・・・・00-90-**-**-*-**-**
IP Address・・・・・・・・192-***-*-***
Name:Cocone Bito』
と書いてあって、IPアドレスと……心音ちゃんの名前。
「でっちあげだ」俺はドンっと二村の胸にその紙を突き返した。
でっちあげ、とは言ったが、きっと二村が嗅ぎつけたのは本当のことだろう。
二村が、瑠華のことをどこまで知ってるか分からなかった。だがヴァレンタインの名前を見た所でつついてこなかったから、そこまでの関係をまだ知らないのだろう。
それだけが救いだ。
「そうですねぇ。信じる、信じないはあなたにお任せしますよ。
じゃぁここは部長の奢りってことで♪」とまるでピエロのように顔に貼りつけた笑顔を崩さない。
「何で俺が奢らなきゃなんねぇんだ」
「あれ?分かりません?頭の良い部長だったらすぐ気付くと思ったんですが、よっぽど頭に血が昇ってるみたいですね。まぁお代わりのウーロン茶頼みますか?」
「結構だ。何が目的だ。早く言え。俺は気が短いんだよ」
俺はテーブルに手を置き、立ったまま二村を睨み下ろすと
「これはまだ会長決裁が降りていないものです。会長が決裁印を押したのなら、裏オークションが開催される。
それが“外部”に漏れたら?
会長は知らなかったとは言え、開催した柏木さんは間違いなく懲戒解雇だ。
『知らなかった』とは言えないですよ?オークション画面は全てプリントアウトして俺の手元にあるから、その気になれば証拠を提示することもできる。
辞めさせられるだけならまだしも、もしかして刑務所行きかもね。
神流の名前で懲戒解雇となったらこの業界では生きられませんよね。
それどころか、他の会社も危うい。
決裁をくだした会長も責任問題を問われて、退陣に追いやられるかもしれない」
二村は楽しそうに笑いながら言って、
今度こそ俺は拳を震わせながらテーブルに身を乗り出し、二村の胸倉を掴んだ。
「二村ぁ!!
てめぇ何が言いたいんだ!!!」



