「まずはこれを見てください」
二村がズイと差し出してきた書類は、見覚えのある―――
瑠華が作成した桂林のリゾート地のオークション案件。
右上の決裁欄に三か所四角が連なっていて、その一番左側『作成者:外資物流事業部:柏木』の場所に瑠華の印が、その右側『外資物流事業部:部長:神流』と言う箇所に確かに俺の印があった。
覚えている。俺自身が目にして俺の部署の決裁は降りている状態だ。だが会長の欄は空欄になっている。つまり最終決裁はされていない。
「これが?てか何でお前が持ってる」
俺が怪訝……と言うよりも、目の前で意味深に口の端を吊り上げている二村に少し恐怖のようなものを覚えた。
二村―――何を企んでやがる。
「これ、見てください」
二村が取り出したタブレット端末はすでに開いてあったのか、リゾート地のHPが開かれていた。
広大な土地、緑の木々や芝生が広がる奥に白い建物が見える。
元々桂林はリゾート地でもあり、観光名所も多い。この場所なら高く買い値がつくだろう。
広東語と英語で書かれた説明はその場所や付近の観光名所などが書かれていた。
益々分けが分からない。と言った具合にさらに俺の眉間に深く皺が刻まれた。
「これは一見して普通のリゾート地のHPで、近々売りに出すこと、買い手を探している旨が記載されてますよね?中国語が堪能な部長ならすぐ分かるかと」
俺は小さく吐息を付き
「分かるが?だから?」ざっと見たがHPの広東語の説明には怪しい部分が見当たらない。
二村が言わんとしていることが分からなかった。
二村はおいしそうにビールを一口飲み
「実はこれ、表の顔で、裏でとんでもない裏取引がされてたんですよ」
とんでもない裏取引―――…?



